偶然という名の運命


〜気がついたもの〜














ある意味夢のようだった、フィオナと一緒の水かけ祭りは終わった。
水かけ祭りは終わり、次の日になると、フィオナはクノックフィエルナの迎えで帰った。
(もちろん村の仲間から離れて、内密にしたつもりだが、
 リ・ティオ以外の村の住民はフィオナが姫だということに気がついている)
夢は夢らしく、あっという間に儚く去る。















そしてシオンは、7年目の旅に出た。












「うわーっ、シオン兄と一緒なんて久しぶりーーッッ!!」
隣で狂喜しているのは、フィオナではなく、アザナ村のキャラバンである、セルキーのキルア。
シオンが3年目の旅をしていたときに知り合い、それ以後、たびたびパートナーとして、一緒にミルラのしずくを集めているのだ。
3年目の時にはまだ15歳だったキルアは、4年経って、19歳になっていた。ちなみにシオンは22歳である。
幼児のような愛らしさを持つキルアだったが、4年という年月の中で大人っぽくなり、
誰が見ても美しいセルキー美人だった。・・八重歯のせいか、人によっては可愛らしくも見える。
そして中身も相変わらず子犬のような感じだ。
お互いに空っぽのケージを抱えて、ヴェオ・ル高地へと続く街道を歩く。
「ヴェオ・ル水門に行くんだよな?シオン兄。」
「そうですよ。シェラの里にも行きたいですし。」
「そっかぁ・・。でもあそこの村長ムカつかないかぁ?
 水門の整備が楽になるからって、『シェラのあかし』を水門にばら撒きやがってさ!
 ユークのシンがいるときはいいけどさ、1人のとき苦労する俺らの身にもなれっての!」
シオンがシェラの里のことを出すと、キルアはきーきーとシェラの里の村長・ジェラームに怒り始めた。
キルアの言うとおり、シェラの里のジェラームは、水門の整備が楽になるからという理由で、
ユーク以外の種族が、シェラの里に入るために必要なシェラのあかしを、ヴェオ・ル水門にばら撒いているのだ。



それによって何がいいのかというと、
シェラのあかしをダンジョンにばら撒く→それを光モノが好きな魔物が拾う→
あかし欲しさにキャラバンが勝手に魔物を倒す→結果水門の整備が楽になる、・・・ということだ。



いい考えといえばいい考えだが、魔物と戦うこちらの身にも確かになって欲しい。
急ぎのときにユークやあかしがなければ、わざわざ危険なところに入るようだし、
ヴェオ・ル水門の敵は結構強い。新米キャラバンではまず無理だろう。
意地悪としか思えない。
「・・でもキルア、ヴェオ・ル水門は結構好きですよね?」
「うん、まぁなッ。」
シオンが聞くと、ころっと態度を変えてキルアがうなずいた。
クラヴァット、リルティ、ユークが力を合わせて作った水門。
そこにセルキーの名前はないが。やはり別種族が力を合わせて、なんてことは少ないので、
この水門の歴史は嬉しい。だからキルアは気に入っているのだろう。
「水門が好きだから、まぁあのムカツク村長の思い通りになってやるよ・・。
 今回はシオン兄がいるから頼もしいしな♪」
そういって、キルアはラケットを振る動作のまねをする。(実際ラケットは馬車の中だ)
そしてぐっとこぶしを握って、ガッツポーズをした。
“頼もしい”という言葉にシオンは少々照れくさくなる。
「つきましたよ・・。じゃ、あかし目指して暴れますか?」
「シオン兄ー。あくまでも目的はミルラのしずくだからなー?」
照れくささを隠すように、ヴェオ・ル水門について、シオンは剣と盾、そしてケージをモグに持たせる。
キルアも同じようにして、嬉しそうにラケットを振った。
「んじゃー、ちょっくら失礼するぜ。」
キルアがそう言い終わったのを合図に、だんっと2人同時に地を蹴り、早速いる魔物に向けて走り出す。
「うらぁ!!」
リザードマンが振り向く前に、キルアが先制攻撃をする。
確実に急所を狙った打撃に、リザードマンはよろめき、それでも剣で攻撃をしようとした。
その切っ先がキルアを斬るその前に。
「斬らせませんよ。」
キィン、という音を立てて、後ろに回っていたシオンが、リザードマンの剣をはじく。
回転しながら、どすっと音を立てて剣が土に刺さった。
同時に盾でリザードマンを殴り、よろけた隙にもう一度キルアが叩く。
リザードマンは事切れる。しかし安心していられない。
「・・キルア!」
「はいはーーいっと。」
シオンがキルアの名を呼ぶと、名前を言っただけなのに、キルアはバック転をして後ろに飛ぶ。
キルアが一瞬前までいた場所に『ブリザラ』が放たれる。放ったのはギガントードだ。
その『ブリザラ』が終わると同時に、ギガントードに『ファイア』が放たれた。
放ったのはシオン。『ファイアリング』というアーティファクトのおかげで、魔石なしでも魔法を放てたのだ。
決して大きくない炎ながらも、弱点の炎で攻められて、ギガントードがうめく。
その隙にシオンはまた詠唱を始め、キルアも力を溜め始める。
ギガントードがうめくのをやめ、もう一度『ブリザラ』を放とうとする前に、
シオンの詠唱は終わり、キルアが突っ込んできた。
「「『ファイア剣』ッッ!!」」
炎をキルアのラケットに宿らせ、キルアがそのまま『ラケットキック』でギガントードに突っ込んだ。
もう一度炎を浴びさせられ、さらに打撃まで加えられて、ギガントードもまた事切れた。
ギガントードが崩れると、何も言わずにシオンとキルアはぱぁんっと頭上で手を合わせた。
2匹の魔物が落とした魔石を拾い、ケアルをキルアが装備し、ブリザドをシオンが装備する。
「・・キルア、戦いが上手になりましたね。」
「うん、誰かさんのおかげでなっ。」
互いににっこりと笑う。年も種族も違うが、相性はぴったりだった。
お互い何も言わずとも、自分が何をすればいいのか、相手が何をして欲しいのかわかるのだ。
それがやっぱり嬉しい。
「この調子でどんどん奥に行こうぜっ!ファイアが出たら俺にくれな。
 俺、前まではブリザド系が好きだったんだけど、最近ファイア系が強くなったんだぜ!
 見ててくれよ、ニンジャテイストに『火遁』で華麗に攻めてやるからなっ!」
「えぇ。もちろんですよ。」
拳を突き上げて、意気揚々と進むキルアに、微笑みながらシオンが続く。


そしてふと前を見たシオンの表情が、ぴしっと音を立てて固まった。
それは決して魔物のせいではなく。


「おろ?あれって・・。」
キルアも気がついて、それに近寄る。シオンはその場で硬直した。





「あら、シオンさん、キルアさんも!奇遇ですね。」
「フィ、フィ、フィオナ姫ぇぇぇ!!??」
「やーッ、姫さん!久しぶりだねぇ。」





のんきに微笑むフィオナを見て、シオンは思わず叫んだ。
キルアは、ぶんぶんと手を大きく振りながら笑顔で近づく。
フィオナの周りには、護衛としてクノックフィエルナや他の衛兵がいるが、まず何故フィオナがこのような場所にいるのか。
シオンの頭の中は、シェラの里にいるエレオノールのようにぐるぐると回っていた。
「なっ・・何でこんな危険な場所に・・?」
「アルフィタリアで、各地に住む魔物を調査しようと思いまして。
 各地にいる魔物に合わせて、兵を強くしようと思っているのです。
 そうすれば街道もより安全になりますし。だから私と、この方達で調査にきたんです。
 この前は『ジャック・モキートの館』にいったんですが、
 ジャックさんとマギー奥様が何だか友好的でして・・。関係がうまくいきそうなんですよ。」
にこにこと笑いながら、ちょっと余計な分まで足してフィオナが言う。
キルアはそれに対して「大変なんだなぁ〜姫ってのは〜。」とのんきに言った。
シオンの頭は少し落ち着きを取り戻したが、それでもまだぐるぐると回っている。
「最初はワタクシ達だけで行こうとしたのですがな・・。姫様が、どうしても自分も行きたいと言い張られて・・。
 護衛をつけると言う条件付で、ここにきたのだよ。」
苦労人のクノックフィエルナが、槍を片手に持ちながら支えを求めて、差し出されたシオンの手をとった。
クノックフィエルナも若くないのに、護衛のためにここまでついてくるのはやはり素晴らしいとシオンは思った。
護衛についているのは、クノックフィエルナ、ルーク=ブーン、イワン=ロルフ、そしてゲーラ=ボイスだった。
普段城の護衛をしている者ばかりだった。キャラバンとして外にいたのを見ていないだけに、何だか頼りなくも見える。
「姫、このような者と話していないで、早く先に進んだほうが・・。」
いつもいきり立っているルークがそういった。口調は優しいが、中身はシオンやキルアを侮辱しているように思える。
「何だっててめぇ?!それは聞き捨てならねぇな!」
「本当のことだろう?キャラバンのくせに姫に堂々と・・、」
「・・キルア、やめて下さい。」
「ルーク、おやめなさい!!」
言葉の真意に気がついたキルアが当然のごとく怒る。それにルークが言い返す。
そのあとにシオンとフィオナが制止に入った。キルアもルークもしぶしぶ黙る。
「ルーク、キャラバンの方に対してその言葉は非常に失礼です。
 この方達を侮辱するのはこの私が許しません。
 シオンさん、キルアさん。不快な思いをさせてしまって申し訳ありませんでした。」
「いいんですよ。キルアもすぐいきりたたないでくださいね。」
「なッ・・だってさぁ・・。」
い・き・り・た・つ・な。わかりましたね?」
「うぅぅ〜・・・。」
フィオナがルークの代わりに頭を下げる。ルークはそっぽを向いただけだった。
その態度に腹が立ったのか、キルアも謝ろうとしない。
ただシオンに睨まれて、渋々ながらも反論はしなかった。
「よろしかったらシオンさん、キルアさん。私達も同行してよいでしょうか?」
「へ?」
「おー!姫と行動できるなんてすげー!歓迎歓迎、大歓迎ーーッッ!!」
思いついたようにフィオナがそう提案すると、シオンは2度目の硬直。
キルアはころっと態度を変えて、跳ねながら、手を叩いて喜んだ。相変わらず子供のようである。
案の定ルークに「まるで子供だな」といわれ、怒りをたっぷりこめてギラリとキルアはルークを睨んだ。
「姫、大丈夫なのでしょうか、この方達は・・。」
「まぁ、何を言うのですか、ゲーラ。この方達はキャラバンです、戦いの技術にはとても長けているんですよ。」
「うむ。それはワシも思う。特にシオン殿は7年目・・だっただろうか?ベテランもベテランなのだ。」
ゲーラが控えめに言うと、フィオナが少し怒った顔をしていった。クノックフィエルナも便乗する。
「いえ・・そうでなく、大事なミルラのしずくを集めているときに、我々が一緒だと、ご迷惑なのではないかと・・。」
ゲーラはぶんぶんと頭を横に振って、そう言った。キルアが目をぱちくりさせる。
フィオナも腕を組んで、少し考えた。
「・・シオンさん、キルアさん、私達がいては、ご迷惑ですか?」
「ぜーんぜんっ!だって姫さん達は魔物の調査に来てるんだろ?
 俺達の邪魔はしないんだろうし、人が多いのは何かといいからな。そうだろ?シオン兄。」
「え・・えぇ・・。」
そのあとに、視線をシオンとキルアに向けて言った。
キルアは丁寧で控えめなゲーラに対して好感を持ったのか、にっこりと笑いながら言葉を返す。
シオンも驚きはしたが、姫が側にいるのは悪いことではない。
キルアの言うことも一理あるので、シオンは戸惑いながらもうなずいた。
「嬉しいです、ありがとうございます。シオンさん、キルアさん。」
「本当にありがたい、感謝しますぞ。」
「気ーにすんなって!頭なんか下げなくていいからさっ!」
「そうです、気にしないでください。よろしくお願いしますね。」
深々と頭を下げるフィオナとクノックフィエルナに、からからと笑いながらキルアが言う。
機嫌はすっかりよくなったようだ。
シオンは、フィオナやクノックフィエルナはもちろん、他の護衛たちに頭を下げる。
慌てて兵がびしっと敬礼を決めた。(ルークは渋々のようだ)



そして数分後。フィオナ達は呆気にとられた。



「兄!」
「わかりました!」
キルアが名前を呼んだだけで、シオンは『ブリザド』の詠唱を始め、詠唱を終えると同時に、キルアが『ラケットキック』を前にいたグリフォンに叩き込む。
グリフォンが倒れると、一斉にリザードマンが向かってきた。
「はん!数だけじゃ俺らを倒せやしないぜ!?」
手に手に武器を持つリザードマンの攻撃を最小限の動きで避け、キルアが叩く。
走り回りながらも周囲に気を配り攻撃の隙をうかがう。
キルアが攻撃されると、ほぼ間髪入れずにシオンが『ケアル』をかける。
「敵はキルアだけじゃないの、わかってますよね?」
敵が動き回るキルアに気を取られていると、後ろからシオンがすばやく切り裂く。
倒れた敵から出た魔石を次々とキルアが拾い、要らない魔石はシオンに投げた。
「「地の底に眠る星の火よ、古の眠り覚まし裁きの手をかざせ!」」
「火遁ッ!!『業火・上弦半月の術』!!!」
「『ファイガ』!!」

「なぁぁっシオン兄のれよぉー!!」
「いや僕はニンジャになれませんし・・。」
そしてギガントードが現れると、2人は何も言わずに『ファイア』の詠唱を始め、
ターゲットリングを合わせたかと思うと、絶妙なタイミングで『ファイガ』を出して見せた。
私語まで飛び交うほどの余裕である。
大きな炎に耐え切れず、ギガントードだけでなく、その後ろに控えていたプリンなども事切れる。
終わったように思ったが、しぶとくまだリザードマンが生きていた。
まだいやがったのか、と小さくキルアが声を漏らす。
リザードマンは数匹しかいないが、シオンとキルアの周りを囲むのには充分な数だった。
敵は笑っているように見えた。すると、シオンはそれにやり返すように微笑んだ。
「・・甘いですよ。」
シオンはそういうと、キルアと背中合わせになる。
その直後、リザードマンが掛け声のような咆哮を出したと同時に来たかと思うと、
動揺もせずに、シオンはエクスカリバーを舞わせる。
キルアもまた、まるで遊んでいるかのように、くるくると回りながら次々とリザードマンをなぎ倒す。
蝶のように舞い、蜂のように刺す。
いつの間にかフィオナ達の近くにいた敵にも、護衛が攻撃をする前に、
シオンはキルアと『ブリザガ』を放った。大きく、美しい雪の華が咲く。
・・どんなに敵が群れようと、敵がどんな武器を持っていようと、シオンとキルアの連係プレーに勝てる敵はいなかった。
「すごい・・・さすがシオンさん!」
「キルア殿も、相当場数を踏んでおられますなぁ。」
護衛たちの意味がないほど、敵をシオンとキルアの2人で倒してしまっていた。
完全に魔物の動きを見切り、弱点を把握している。
何よりも、阿吽の呼吸でシオンとキルアが合っているのだ。
無駄ない動きで戦闘をする2人に、フィオナは思わず拍手を送る。
護衛たちは、ぽかーんと口をあけているだけだった。










「楽勝楽勝ッ!」
「あ・・すいません、魔物の調査、できました?」
一通り魔物を片付け終えて、シオンとキルアがフィオナ達の元に戻ってくる。
2人には目立った外傷もない。手には、いくつもの『シェラのあかし』を握っている。
・・・本当に、2人にとってこの戦いは“楽勝”だったのだろう。
しかしシオンは、しまったという顔をして、フィオナの顔を見た。
あっという間に多くの魔物を片付けてしまったので、調査する暇はなかっただろう。
フィオナも、つい戦いに見惚れて、魔物をじっくり観察することなど、とうに忘れていた。
「魔物を観察はしませんでしたが・・シオンさん達の戦う様子を見て、
 『ああいう風に戦えばいいのだ』と、教えれば充分だと思いました。だから大丈夫ですよ。」
「そうですか・・ならよかったです。」
「へっへっ、俺達ってそんなに戦い方、よかった?」
「ええ。素晴らしかったですよ。」
「そうだろうな!ニンジャは闇に美しく舞わなきゃニンジャじゃねぇもんな!」
「いや今昼なんですけど・・。」
ほっとしたようにシオンが言う。シオンの肩に腕を回して、キルアも照れくさそうに言った。
それに対してシオンがちょっとずれたツッコミをする。
「すごい・・さすがキャラバンの方!ソールさんが褒めていただけありますね!」
「自分達の出番がないぐらいでしたよ!」
「あっはっはっはっもっと褒めれ〜〜!!」
「こらっ、キルア。調子に乗っちゃいけませんよ。」
ゲーラとイワンが、やんややんやと2人を褒め称える。
キルアは片手を腰に当て、もう片方の手で髪をかきあげながら、とっても嬉しそうにしていた。
調子に乗っているキルアに、びしっとシオンが言う。キルアは聞いていない。
ルークはぶすーーっとした顔だ。2人を褒め称える気もないらしい。
シオンはそれに気がついていたが、別に気にもしなかった。
引き続き、しずくを得るために魔物を倒し続ける。




「後はボスだけですね。ゴーレムは強いですから、気をつけて。」
「まぁ死にそうになったらすぐにシオン兄が回復してくれるって。
 ゴーレムからグリーンスフィア、取れるかな〜〜♪楽しみだぜっ!」
しばらくして、残す魔物は、ヴェオ・ル水門のボス、ゴーレムだけとなると、
シオンとキルアはフィオナ達のほうに振り返って言った。
護衛達がごくりと固唾を飲み込む。フィオナも緊張した面持ちになる。
「護衛の人たちはフィオナ姫を守ることに集中してください。
 僕達でゴーレムを倒します。いざとなったら守ります。必ず。」
「あんた達のお世話になるほど、俺達は弱くない。」
「てめ・・兄に何言って・・、」
「・・わかりました。失礼しました。」
シオンが微笑みながら言う。その微笑みは、不思議と安心感を人に持たせる。
ルークが緊張のためか、そう言ったが、シオンは怒りもせず、ぺこりと頭を下げた。
シオンの様子に、ルークが戸惑う。あまりにも優しい。
キルアはシオンを侮辱されて怒りかけたが、シオンに止められた。
「それじゃあ、行きましょうか。」
顔を上げたシオンが再び微笑み、自らを先頭にしてゴーレムの元へと歩み寄る。
後にキルア、クノックフィエルナ、イワン、フィオナ、ゲーラ、ルークと続く。



がごっ・・がごごごご・・・



何か固い物がぶつかり合う音がする。
侵入者の気配を感じたゴーレムが、グリーンスフィア――核――を中心として、
体を作り上げる。ぶるるる・・と空気が震える音がし、シオン達は構えた。
厳しい表情の護衛とは裏腹に、シオンは微笑んでいる。キルアも嬉しそうだ。
「グリーンスフィア・・・欲しいなぁ・・。」
目の前に自分が欲しいものを見据えて、キルアは笑っていた。
手が震えているのは恐怖のせいではなく、武者震いだ。
「ミルラのしずく・・いただいていきますね。」
シオンは微笑みを崩さず、エクスカリバーを真っ直ぐにゴーレムに向ける。
ゴーレムは体を組み終え、シオン達に向かってきた。
しかしシオン達はゴーレムより先に、プリン達を片付けることにした。
4匹のプリン達が、ゴーレム以外は誰彼構わず向かってくる。
フィオナ達への攻撃を避けたいがため、シオンとキルアは即効で魔法を放つことにする。
「「地の底に眠る星の火よ、古の眠り覚まし裁きの手をかざせ!」」
「『業火・上弦半月の術』!!」
「『ファイガ』!!」

ものともせずに2人だけで、さっきと同じように『ファイガ』を放ち、プリンを片付ける。
1、2匹程度がしぶとく効果範囲から逃げていたようだが、
それはイワンやクノックフィエルナが退治した。
そしてキルアとシオンはゴーレムの正面と背面に回る。
キルアへ攻撃をさせないために、シオンはキルアを背面に回し、自分は正面に出る。
ゴーレムの岩の瞳に睨まれても、全く動じない。
できるだけゴーレムの関節に狙いを定めて、エクスカリバーを舞わせる。
「兄!」
後ろにいるキルアが叫び、シオンはすぐに盾で防御の姿勢をする。
案の定、ゴーレムから強烈なパンチが見舞われ、それに何とか耐える。
防御を解き、攻撃が終わった隙を突いて、剣での打撃を叩き込む。
挟まれて逃げることもできないゴーレムは、邪魔な2人をどかすために、
腕を横に出して、そのまま回転した。
「わぁぁっ!!」
「シオンさん!」
「兄ぃぃっっ!!」
キルアは何とか後ろに飛んでそれを避けたが、正面にいたシオンはよけ切れなかった。
もろに正面から打撃を食らい、後ろに吹っ飛ぶ。
ちょうどみぞおちあたりを攻撃されて、苦しさに咳き込んだ。
フィオナとキルアが叫んだ。クノックフィエルナ達もシオンのほうを見る。
「兄、平気か!?この野郎っ・・!」
ぎりりとキルアは歯軋りをし、憎々しげにゴーレムを睨む。
「シオンさんっ・・!」
「あっ、姫!?我々から離れては・・!」
シオンはうっすら涙を目ににじませながら、起き上がろうとしたが、
ダメージが意外にも大きく、起きられなかった。
心配したフィオナが、声をかける前にシオンに駆け寄ろうとする。
クノックフィエルナが、慌ててそれを止めようとした。
シオンもそれに気がついて、止めようとした。
「ひ・・!」
「あぶねぇぞ、行くなぁぁぁっっ!!」

シオンが叫ぶ前に、ゴーレムをシオンの元に行かせまいとしていたキルアが叫んだ。
しかしゴーレムはそれをあざ笑うかのように、キルアが後ろを向いた隙を盗んで、
あっという間に、武器も持たないフィオナに近づく。
「!」
「姫様ーーっっっ!!」
フィオナが気づいたときにはすでに遅く、ゴーレムは強烈な打撃で、
フィオナを吹っ飛ばそうとした。
吹っ飛ばしたのではない。吹っ飛ばそうとしたのだ。
「・・っ・・!」
「・・・・・兄っ!・・んのやろぉぉぉぉ!!!!!!!!!
びびびっ、と衝撃が伝わった。キルアが怒り狂い、ゴーレムに突っ込む。
がががっ、という音を立てて、レンガの群れに2人は突っ込んだ。
2人、だ。フィオナだけでなく、シオンも。
かはっ、と音を立てて、シオンは少量の血を吐いた。
シオンは、苦しいのをこらえて立ち上がり、すぐにフィオナのもとに走ったのだ。
フィオナがシオンのところに走っていたおかげで、フィオナへの距離が遠くなかったのが幸いだったか。
ぎりぎりで構えた盾と剣で、フィオナを守った。
しかし両方ゴーレムの拳の重みに耐え切れず、またシオンが握っている力が弱かったのもあって、
ギィン、という音を立てて両方ともシオンの手から弾き飛ばされた。
それでもダメージは軽減され、傷はあるものの、致命的なダメージをシオンは負わなかった。
「姫・・ご無事ですか?」
「シオンさん!」
自分の後ろにいるフィオナを気遣い、彼女が背中を打った以外は怪我をしていないのを見ると、
シオンは安心して微笑んだ。ほぅ、と声を出す。
「ごめんなさい・・ごめんなさい・・。」
フィオナは涙目になりながら謝った。
何も考えずに、ただシオンの側に駆け寄りたくて走っただけだったのに、
逆にシオンはもっと痛手を被ってしまったのだ。
「いいんですよ、無事でよかったです・・。」
『ケアル』を詠唱してフィオナにかけ、その光を分けてもらう。
痛みはほぼ取れた。ゴーレムは怒り狂ったキルアが抑えている。
「シオン殿!申し訳ない・・。」
「姫!シオンさん!ご無事ですか?!」
クノックフィエルナ達が駆け寄ってきて、シオンは平気ですと軽く手を振り、起き上がる。
ルークが拾い、無言で差し出した剣と盾を受け取り、お礼を言った。
ずきっと痛む傷口にもう一度『ケアル』を放ち、「姫を頼みますよ!」といって、シオンもゴーレムに向けて走る。
いつまでもキルアだけに負担をかけられない。
「兄!傷は?」
「致命傷じゃありませんでしたから、すぐに治りましたよ。」
「よかったぁ・・。」
攻撃しながら言ったキルアに、同じく攻撃しながらシオンも言った。
キルアは心から安堵し、攻撃に集中する。シオンも攻撃を続ける。
その様子を、不安そうに手を組みながらフィオナは見ていた。
さっき自分が飛び出したせいでシオンを傷つけてしまった以上、もう近づけない。
護衛達もその様子を見ながら、復活したプリン達を槍で斬る。


「・・・兄を傷つける奴は、俺が絶対に許さねぇ!!」


キルアがそう言って、とどめとばかりに『ラケットキック』で突っ込むと、ゴーレムは震え始め、
ガラガラと音を立てて崩れた。グリーンスフィアがころころとキルアの足元に転がり、
いろいろな色に光った後、光を失った。
「シオンさん!」
「シオン殿!キルア殿!」
「「キルアさん!」」
「・・シオン、さん!」
ゴーレムが消えると、フィオナ達は一斉に2人に駆け寄った。
口々に2人の名前を呼び、ルークは、戸惑いがちにシオンを呼んだ。
「ごめんなさい・・・!」
すでに回復してしまって見えないが、フィオナはシオンが怪我した場所を見て、
涙をいっぱいに溜めながら謝った。
「・・こんなこと、日常茶飯事ですよ。慣れたものです。だから、気にしないでください。」
シオンはフィオナの涙に戸惑いながら、そう答えた。
何度意識が飛ぶような打撃を受けたことか。それに比べれば、さっきのはずっと軽いのだ。
「・・すまなかった。」
ルークもシオンの元に歩み寄り、兜を脱いで、敬礼をした。
騎士にとっては最大級の敬意の表示だ。シオンはさっきまでの言動の違いにきょとんとする。
「シオンさんが守ってくださらなかったら、姫がどうなっていたことか・・。
 姫を守っていただき、ありがとうございます。そして、申し訳ありませんでした。
 先ほどまでの失礼な言動、深くお詫びいたします・・・!」
先ほどとは違う、とても丁寧な言葉で、心から、ルークは感謝と謝罪をした。
シオンはきょとんとした顔を、微笑みに変える。
ルークはその微笑みを見て、解きかけた敬礼を、もう一度した。
イワンとゲーラ、そしてクノックフィエルナもそうする。
その後、フィオナ以外は、今度はキルアの元に駆け寄る。
少し離れた場所で、何故かルークとキルアがつかみ合っている。
キルアに対しては素直になっていないのだろう。シオンは苦笑した。
そして硬直する。
「・・・え?え?えぇ??」
「ごめんなさい・・、でも、本当によかった・・・!!」
キルアに目を向けていると、いつの間にか自分の胸の辺りに、フィオナが飛び込んでいた。
腕をシオンの首に回し、安堵の涙を流していた。
ああああのあのあの・・っ・・・。僕も・・姫が無事でよかったです・・。」
あわあわと1人で慌てながら、シオンは戸惑いがちにそれを受け止める。
美しい金髪と、リルティの特徴を持った髪に見惚れ、シオンは至福というより、恥ずかしさでいっぱいだった。


「あーあーあーあーー・・・何あそこ?」
「まぁ相変わらずというか・・クポ。」
その様子をげんなりとしながらキルアとモグ達が見ていた。
シオンはそれに気がつける余裕がなく、フィオナはシオンの胸に顔をうずめているのでわからない。
ぷんすかと湯気を上げて2人を引き離そうとするクノックフィエルナを、イワン、ルーク、ゲーラが必死に抑えていた。
「全く・・こんな時にあんなのやめて欲しいよな・・。」
ふー・・とため息をつきながら、キルアはどっかと座り込んだ。
そこに、今までずっと黙っていたモグが寄る。
「キルアもそのうちやるクポ?」
「俺は女には興味ないっ。」
モグが新しい人の弱みを探すかのように言うと、キルアはぴしゃりといった。
「でもキルア、この前クラヴァットの女の子2人に言い寄られてたって、シオンが言ってたクポ・・。
んなぁッ!?シオン兄ッ、何言ってんだよ〜〜!!(確かに言い寄られたしちょっと可愛かったけどっ!!)」
恋の噂好きなモグはガッカリするかと思いきや、まだ勝算があるらしく、
ぼそりとそう呟くと、案の定キルアは真っ赤になりながら過剰反応して、モグを楽しませた。
セルキーと美的感覚が似ているクラヴァットの中には、
美しい容貌のセルキーに魅せられるクラヴァットが多くいる。
それが結婚などに進展した話は聞いたことないが、キルアもその一例だ。珍しくはない。


「「「・・・・。」」」
そんな様子を、イワン、ルーク、ゲーラはやや冷ややかな目つきで見ていた。
「って・・そういうことしてる場合じゃない!」
「そ、そうですね!じゃあフィオナ姫、僕達ミルラのしずくをいただくのでッッ!」
それにキルアとシオンは気がついて(シオンの場合はようやくだが)
慌ててケージをモグからひったくって抱え、ミルラの木の下に走った。
2人が慌てる様子を見て、残されたフィオナ達は、自然と笑みがこぼれる。
(あいつらぁぁ〜〜〜!!)
(あああどうしましょう・・。あんなに笑われて・・・。)
小さな笑いがだんだん大きくなり、キルアはぎりぎりと歯軋りをし、シオンは恥ずかしさにうずくまっていた。






「それでは、私達はそろそろ・・。」
しばらくして、キルアとシオンが(恥ずかしさのため)2人だけで休憩していると、
フィオナ達が2人のもとにやってきた。
「あれっ、そうか。帰るのか。」
「えぇ。これからゴーレム対策のための準備をしなければいけません。
 お2人の戦い方は、とても勉強になるものでしたよ。」
キルアが思い出したように言うと、フィオナはそう返した。
名残惜しいですけども・・・、と最後に付け足して。
褒められて、キルアが照れる。シオンは恥ずかしさを隠しきれずに、笑みを浮かべた。
護衛達は、2人に向かって敬礼をする。びしっ、と綺麗にそろった敬礼だ。
「シオンさん、今日はお怪我をさせて、申し訳ありませんでした。」
「そんなに気にしないでください、フィオナ姫。
 こんなことは日常茶飯事だといったはずですよ?」
「・・・そうですね。」
フィオナがシオンに視線を向け、頭を下げると、シオンは手を横に振ってそういった。
「では、ここで失礼いたします。またお会いできるといいですね。」
「シオン殿、キルア殿、どうかお達者で。」
フィオナとクノックフィエルナが一礼する。シオンたちも合わせて座ったまま頭を下げた。
護衛たちも、「失礼しました!」「どうかお元気で!」といいながら、同じようにする。



・・去り行くフィオナの背中を見ながら、シオンは何故か寂しい気持ちになる。



フィオナといた今までの時間が頭を駆け巡る。
駆け巡った後に訪れたのは、変わらない寂しさと、彼女を守れたことへの誇り。
ずっと一緒にいたい。
そして彼女を守りたい。
何がこんな気持ちにさせるのかわからないが、フィオナを想うと、いつもそんな風になる。


「にーーいーー。」
「はっ!?」
「な、何だよ・・・・そんなに驚かなくてもいいじゃん。」
いつの間にかぼぅっとしていて、不意に話しかけられ、シオンは飛び上がった。
その反応で、逆にキルアも驚いている。
「すいません・・それで、何ですか?キルア?」
「いや・・・シオン兄見て思ったんだけどさ・・。」
驚いたキルアに謝り、そう切り出す。キルアは少し戸惑いがちに、言葉をつむぐのをそこでやめる。
シオンが疑問符を浮かべると。





「・・兄ってさ、絶対、あの姫さんのこと、好きだろ?」





キルアがそういうと、シオンの目は点になった。
その理由は驚きと、考えてもいなかった気持ち。
キルアに言われて、初めて気がついた気持ち。
やっと気がついた。これで、
どうしてフィオナがド・ハッティと話しているのを見て、悔しかったのか。
どうして彼女が行ってしまって、寂しいのか。



その理由がやっとわかった。



知らぬうちに、フィオナを好きになってしまっていたのだ。





「あぁ・・。」
「やっぱり。だって目が違ったもんな。」
シオンは間抜けな声を出す。キルアは腕を組んで、確信を得た。
「兄は感情が表情に出すぎだよ。俺だってすぐわかったもん。」
はぁ、とキルアはため息をついた。モグも側でうんうんと頷く。
シオンはどうしたらいいのかわからず、とりあえず片手で頭を掻いた。
「俺はまださ、『異性として好きになる』って感情は全然わかんねぇから、
 兄がどんな気持ちなのかわかんねぇけどさ、姫さんが好きなんだー、
 ってのは心底伝わったよ。兄、姫さんを守るとき、すげぇ必死だったもんな。」
そこまで自分は表情に出していたのか、とシオンは恥ずかしくなる。
「・・兄、アルフィタリアに行きたいとか・・思ってるのか?」
・・キルアが少し寂しそうに、そう聞いてくる。シオンは戸惑った。
フィオナの側にいて、彼女を守りたい。
そう思う気持ちはあるけれど、今回はたまたまフィオナが側にいて、
彼女を守る結果になっただけ。普通フィオナを守るのは護衛で、シオンの役目ではない。
行きたいけれど、行きたいのに。
「僕にはまだ・・キャラバンとしての使命がありますから・・。」
「それが終わったらだよ。兄、もう22歳だろ?もうすぐ引退じゃないのか?」
逃げようとしたが、キルアは逃がしてくれない。
確かにシオンはもう22歳。そろそろ、弟や妹の世代に変わる頃なのだ。
それを思って、シオンは悲しくなる。
外へいけない寂しさ、大事な弟や妹を、危険な目に合わせたくないという思い。
外にいけなくなったら、フィオナにも会えない。


そしてシオンはもう1つ、自分がキャラバンでいられるうちに、やりたいことがあった。


それを成さないまま、引退はできない。
「僕はまだ・・・引退しませんよ。」
「それは嬉しいけどさ、やっぱり引退する時期は来る。その後の事を聞いてるんだ、俺は。
 姫さんの側に行くのか、それとも、自分の村で一生を過ごすのか。そこだよ。」
答えをうまくはぐらかせない。キルアも食いついてくる。
シオンは、どう言ったらいいのか迷った。
フィオナの側には行きたい。けれど、家の、農家の仕事を放り出したくもない。
家族や仲間をおいて、自分はアルフィタリアにいけるのか。
いや、フィオナは、自分が側にいて欲しいと思っているのだろうか?
シオンの頭の中に、鮮明に、ルダの村のことが浮かんでくる。
ド・ハッティ。
フィオナの心の扉をいとも簡単に開けた、あのセルキー。
フィオナは、自分よりむしろ、ド・ハッティに側にいて欲しいと思っているのかもしれない。
それだったら・・ティパの村で一生を過ごそう。シオンは思った。
「・・ティパの村で・・・暮らしますよ。」
「・・・・・・・・・そうか・・・・。」
シオンがそういうと、キルアは、寂しそうに、悔しそうにそういうだけだった。
シオンはうつむく。涙がこぼれた。キルアは、それを察して、背を向けてくれた。




堰を切ったように、涙が溢れ、
火がついたように、そこにシオンの泣き声が響き渡った。




諦めよう。遠すぎる恋だから。
気づいたばかりだけど、今なら捨てられるかもしれない。
どちらにしても、フィオナの側にはいられない。
自分にはその資格はきっとない。
あるとしても、それはド・ハッティのものだろう。
それに、自分にはまだ、やらなければいけないことがある。
だったら身を引こう。自分のやらなければいけないことに、専念しよう。
それが終わったら、ティパの村で、一生を過ごそう。





・・・・・でもそれは、あまりにも悲しい。





やりきれない気持ちに、シオンは泣いた。
(・・・俺、シオン兄の涙、初めて見たよ。)
その様子を、キルアは背中で見ていた。目ではない。背中で。
(ドラゴンゾンビが前にいたって、全然怖がったりしない、あの強い兄がだぞ?
 ・・姫さんのせいで、泣いてるんだ。)
キルアは、うつむいたまま、何も言わない。
(姫さん、姫さん、兄を泣かせるなよ。あんまり兄を泣かせたら、俺はあんたを許さない。)
拳をぎゅっと握る。それが理不尽なことは、キルアにはもちろんわかっている。
だけど、そう思わずにはいられない。
大切な相棒を、こんなに泣かせるあの姫は、今、のうのうと城で、騎士の指導でもしているのだろうか。
シオンの気持ちなど、微塵も感じずに?
・・そう思うと、かすかな怒りが沸いてしまう。
(・・・兄・・・・・。)
慰めることができずに、キルアは、目を閉じて、何か思うこともやめた。
自分まで、こんなにも辛いから。

(シオン・・・。)
モグも、何も言わない。
やっとシオンは気がついたのに、捨てなければならない思いだとは。
どんなにか苦しいことだろう。でも自分には、どうにもできない。
モグは、自分の無力さを悔やんでいた。

ミルラの木も、何も言わない。
ただ、その様子を見つめるだけ。











「フィオナ・・・姫・・・。」










ヴェオ・ル水門のミルラの木がある場所に。
シオンの寂しそうな声だけが、妙に響いて聞こえた。










〜つづく〜





* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * ミニあとがき * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
お待たせしました(待っていてくれた方がいらっしゃれば嬉しいです)。
むぞフィオシリーズ第4弾です。ちょうど中間ぐらいですかね。
今回はキルアも混ぜてます。
キルアのことは、『キャラバン&村紹介+α』や『認められなかった少年』に詳しく載っています。
キルアのことがわからなかった方は見てくださいね。

今回はへたれシオンで(汗)
泣いてばっかりで情けない、と自分でも思いますが、そこは見逃してください。
へたれの前に精一杯カッコよくしたつもりなのです(滝汗)
キルアとの連携とか。実際ゲームにあんなに敵は出ませんけどね。
すいません、描写上そうさせていただきました。

シオンは今、フィオナのことを諦めている状態です。
彼女の側にいるべきなのはド・ハッティだ、と決めてます。
それで今キャラバンに専念しよう、と考えているわけです。
・・・え?もしかしてこれで終わりにしないかって?
それは先をお楽しみに。
シオンが思った『やらなければいけないこと』はもちろんEDにつながるものです。

次回である程度まとめるつもりです(まだ終わりませんが)
それでは、毎度のごとくむぞうさ×フィオナの同志が増えることを願いつつ。





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