僕の生きた道 僕の生きる道










――――――自分が死ぬと悟った瞬間、人は、今までの人生を走馬灯が流れるかのごとく思いだすという――――――








〜僕の生きた道 僕の生きる道〜







・・・今、僕達は絶体絶命のピンチだ。
“僕”じゃなく、“僕達”だ。


僕は逃げろといったのに、僕の弟――――ジタンは、僕を助けに来てくれた。
でも、君はバカだよ、ジタン。
今君がどうしてこんな僕につくしてくれるのかわからない。
僕なんて見捨てて自分だけ助かればいいのに。
イーファの樹の蔓が僕らの体を貫こうとする。
その瞬間に、何故か僕は今までの事を思い出したんだ。




僕の人生と、ジタンのことを。





1776年――――――――――、僕は産まれた。

正式には・・・・『創られた』というべきかな?



あの気味悪い、緑色の液体が入ったあのカプセルの中で。
何故か産まれた時の事は、覚えているんだ。

目の前には死んだような顔をしているジェノム達・・・。
ふっと口の端をあげてこちらを見ているガーランド・・・・。
目に映る鮮明すぎるほどの青い床、天井、壁。


そして、青い光―――――――・・・・・・。


僕は幼い頃は・・これでもやんちゃなただの少年に過ぎなかったんだ。
でも・・・、


『遊んで』


そう言っても、ガーランドも誰も遊んでくれなかった。
そりゃそうさ。ジェノム達は悲しすぎるほど反応をくれなかったし、ガーランドはずっと研究ばかり。
つまんなくてつまんなくて、青い光をずっと眺めていたり、そこら辺にある石ころに彫刻をしたり、
周りのモンスターたちを魔法で倒したりして、退屈を免れていた。

『退屈』がその頃は一番恐かったんだ。

誰も遊んでくれなかった。でも、不思議に『孤独』は感じなかった。
幼い頃は、人がいると思うだけでそう感じはしないのだろうか。
それとも、このジェノム達とは違う『優越感』というものがあったからなのだろうか。
・・理由はどうとして、喜びも悲しみもその頃はなかった。
時々ガーランドの部屋に忍び込んで、悪戯をして喜ぶぐらいだった。


でも、その幼い僕は、ある日をキッカケにしていなくなった―――――――・・・。


ガーランドが僕の産まれたカプセルの前で、不気味に笑っていた。
僕は何をしているんだろうと思いながら、覗いていた。
ガーランドが抱いていたのかはわからなかったけど、そこにいたのは金髪に蒼い瞳の赤ん坊・・・・・。
ガーランドは手をかざし、紅い光をその赤ん坊にぶつけた。
赤ん坊はおぎゃあ、と苦しそうに言った後、すぐに目を覚ました。
その赤ん坊の名は――――――――そう、僕が憎んで、でも、今は誇らしくてたまらない、



ジタン・トライバル。




ジタンは、ガイアの人間によく似た感情の持ち主だったけど、ここでは生憎その感情は育たない。
当時のジタンは不器用に感情をあらわしながらも、ほとんど無口だった。
最初は遊べる人ができたと思った。
でも、後にすごく憎らしくなってきた。
それは―――――・・・、


『ジタン、僕の足を引っ張らないでおくれよ』
『・・・・』
ジタンを連れて、ブラン・バルの少し外までやってきて、
退屈しのぎにモンスターと戦っていた。
最初は良かったんだけど、バトルの緊張感からなのか、
ジタンは元からあったトランス能力をコントロールできなくて、よくその力を暴走させていた。
そのうち、トランスで物凄い力を出して、モンスターに圧勝する事がよくあった。

・・・悔しかったんだ。

何故幼いほうのジタンがこんなに強いのか。
何故ガーランドは僕を選んでくれなかったのか。

これならまだあの心無いジェノムでいたほうが、そんなもの感じずにすんだのに。
それ以来僕は、ジタンの顔を見るのも嫌だった。
でもジタンは、僕と同じで遊ぶ人がいなかったから、いつも僕についてきたんだ。


『遊んで』


前の僕と同じ言葉。でもうっとうしくて、僕の袖を掴む手を払った。時には乱暴に突き飛ばした。
でもジタンは、ついてきたんだ。




そんなある日―――――――――、


『五月蝿いなっっっ!!!!!!!』
僕は無我夢中で、ついてきたジタンをガイアに捨てた。
その顔は、とても悲しそうに・・・・・“ガイアの青い光”に落ちていった。


僕の上を行く人間なんて要らない―――――・・・・・。


そんな自分勝手な思いが、僕の頭の中を巡っていた。

そしてガーランドは、僕をガイアに連れて行き、テラへの出入りを禁止した。
ガイアに住むなんてまっぴらだったけど、ジタンへの力を示すと言う事で、応じた。
来る日も来る日も、ジタンに力を示すためにいろいろと各地を回り、ある日知った召喚獣の力を手に入れるためあの女王を・・。


――――――――ああ、僕はバカだったよ、ジタン!


時々覗くと君は――――よく、笑っていた。
その姿は、羨ましいほど、美しかったんだ。
召喚獣よりも、ずっと。
いろんな人に愛され、強い君を、あの時は憎いとしか思っていなかったけど。


本当は・・羨ましかったんだ。
本当は・・強さなんて全然わかっちゃいなかったんだ。


そんな中、君がさっき言った言葉は・・僕のそんな心にしみていく。
ひび割れた大地に雨が降り、大地を潤すように・・・。



『誰かを助けるのに理由がいるかい?』




君のその言葉は、偽りなんかじゃないよね?
人のために喜び、泣き、怒る君。
だから、どうして人を悲しませた僕なんかを助けたのかが、よくわからなかったんだ。


どうして君はこんなにも優しいんだろう。
どうして君はこんなにも強いんだろう。

どうして君は・・・こんなにも、こんなにも、人に愛されるんだろう。


羨ましくて、仕方なかった。
自分勝手なことばかりして、僕が愛されないのは・・当たり前だった。
でも、愛されたかった。愛してくれるのなら誰でも良かった。
退屈を紛らわし、嫉妬をし、罪を犯し・・・、そんな人、誰も愛してくれやしないのに。


でも、良かったよ。最後の最後に、僕を愛してくれた。助けに来てくれた。
その人は、一番憎んだジタンだった。



ガーランドがジタンを選んだわけが、やっとわかった気がした。



・・・・泣かないでくれ、ジタン。君に涙は似合わない。
僕はもうすぐ逝ってしまう運命なんだ。君も知っていただろう?
僕はあの世で、あの女王様に謝るつもりだ。そして、罪を償うつもりだ。



だから・・・君には生きていて欲しい・・・・。



・・・君には、待っている人がいるんだろう?
仲間がいるんだろう?愛してくれる人がいるんだろう?
早くその人のところに向かってあげて。
い、痛いよジタン。叩かないでくれ。
ホラ、蔓が傍に迫っているよ。だからジタン、




「君には・・・・待っている人がいるんだろう・・・?
 その人を悲しませちゃいけない・・。・・・だから、だから・・・、」

拳に最後の力をこめる。僕を守るようにかばうジタンの体を全身の力で押した。



「君は・・・・生きるんだ・・・・・・・・・。」



そして、僕は最後の力でジタンを下に突き落とした。
驚いたジタンの顔から涙が落ち、宙に舞う。手を必死に伸ばしている。
その手は虚空の中に絵を描いているような感じでしかない。
ジタンの意識とは反対に体は落ちていく。


「クジャぁーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!」


そんな声が聞こえる。
僕の体は・・・既に蔓によってくしざしだ。でも、不思議と痛みはなかった。


ああ、良かったよ、ジタン。
こんな事だけれど、君に兄らしいことをしてあげられて。
カッコつけじゃないんだ。本当に。
逆にいえば、これだけしか出来なかったけれど。

目から熱いものがこみ上げてくる。


・・・ジタン、さよならだよ。




どうか君だけは、生きて―――――――・・・・。
































「・・・っつ・・・。」
オレの目が覚めたのは、かなり時間が経ってからだった。
立とうとすると、打ったはずの腰は、全然大丈夫だったし、
縦横無尽に体に受けたはずの蔓の傷も、塞がりかけていた。
しばらく頭を整理しようとして、ボーっとしていた・・・・・。

「・・・・クジャ!!!!!!!」

はっとして思わずオレは叫んだ。だが、その声が蔓に振動として伝わるだけで、すぐにまた静かになった。
「あいつ・・・平気かな・・・・。」
不安定な足場の蔓を上って、オレはクジャがいたところを見て――――絶句した。
蔓を体に受けたその時のまま、クジャは・・・白骨化していた。
残っているのは、クジャが身につけていたボロボロの衣服と、抜け落ちた数本の銀髪・・。
「・・・・・っ・・・・・・・。」
何もいえなかった。ただ、ふつふつと心の中に何かが溜まっていって・・、
「あーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!」
爆発した。
ちくしょう!!何でお前そんな姿で・・・・オレなんか助けるから・・・・、」
オレは狂ったように蔓を叩きまくった。振動が蔓に伝わる。
「何で何で何で何でっ!!!!クジャの大馬鹿野郎!カッコつけたがり!ナルシストっ!!!!」
蔓を叩きまくって、力なくオレはその場に座り込んだ。
「ちくしょう!!何でオレはいつも・・・・。」

ぐっと拳を握り締める。


「助けられてばかりで・・助けられないんだ・・・・。」


クジャの白骨が目に焼きつく。次第に視界がぼやけていく・・。
何でオレはこんなに不甲斐ないんだ。どうして人一人助けられないんだっっ!!!
自分に対しての怒りと悲しみが、心と頭の中で暴走する。


あの時・・オレは突き落とされていく中で・・
あいつが蔓に貫かれるのを見ていただけだった・・・。
旅のときも、何一つ助けられたものなんてなかった。
幼い時だって、自分のせいで好きな人を死なせたんだ!!!


「なのに・・・こんなオレに・・・・生きろ、だって・・・・・・?」


クジャの言葉が耳から離れない。

おかしくってしょうがない。
何でオレみたいな、何一つ守れない人間に『生きろ』って言うんだ?
クジャ、お前だって生きたくなかったのか?
何で・・自分を犠牲にしてまで・・・・?


『君には・・・・待ってる人がいるんだろう・・・?その人を悲しませちゃいけない・・。』


クジャのその言葉を思い出してオレははっとした。


・・・・ダガー・・・・。


どうしてるんだろうな、アイツ・・・。
泣きそうな顔してオレの事見送ってた。飛空挺から落ちるかと思って少しあせった・・・。
・・オレ以外の他の奴でも見つけて、幸せになってるといいけどな。
まーオレ以上のイイオトコなんてそうそういねーな・・・ってそういうことじゃなくて。


『おねがい、必ず帰って来て・・・。』


・・・まさかオレの帰り・・待ってんじゃねぇだろうな?
もしそうだとしたら・・会いたい・・・・けど・・・・。
そうじゃなかったら・・どうしよっかねぇ?
まーなんにしてもここからでられなきゃなーーーーーんにもできやしねぇよな。
「よしっ。」
オレは土で少し汚れた・・というか錆びた少し頼りないオリハルコンで蔓をこんこんと叩いてみた。

・・石化してんのか?・・そうじゃねぇよな。
接着剤で蔓くっつけて塗り固めたような感じだ。
びくともしねぇや。まぁ短剣で最強の威力とは言え錆びたオリハルコンじゃなぁ・・・。
うー、油と水と布さえありゃなぁ。少しは綺麗にできるんだけど、こんな状況じゃあ無理だよなぁ。

しばらくしてオレはクジャ・・の遺体を見た。
あのときのクジャは・・微笑んでやがった。恐くなかったのか?死ぬ事が・・。
いや。そんなワケない。誰だって死ぬ事は恐いんだ。
・・・オレだって、恐いさ。生きたい・・。
クジャの墓も・・こうなっちゃ作らないわけにはいかないし・・・。
・・ビビやフライヤや他の奴らやタンタラスの奴ら・・・・ダガー・・。
「・・会いてぇ・・・・。」
ぽつりと言った。
・・・こうなってくると生きたい、って欲がでてくるもんなんだよなぁ。



生きて・・・あいつらと・・一緒に・・・・!!



らーららら・・・
らーららら・・・



生きたい、そう思ったら、口からその歌が飛び出してきた。
ダガーが『安心する』と言って歌っていたこの歌。
歌って不思議なもんだよなぁ、オレも、小さい時あの歌、よく歌ったなぁ。

自分が死にそうな夢を見ると、恐くなって、いつも歌っていた。
でも・・・死んだのは・・・・オレじゃ、なかった・・・・。
夢の中で出てきたクジャは・・・きっと、幻だったんだ。
そうだ。そうに決まってるんだ。
その証拠に、・・何もないオレを、助けてくれた。
生きるための術をくれたんだ。


・・・・ん?


もしかして・・・そのために、クジャはオレを生かしたのか?
あいつらの傍にいられるように?


「・・・大バカ野郎ッッ・・・!!」


そう思ったとき、冷たいけど熱いものが、頬を通った。
「・・・サイコーだぜ、クジャ・・・・。」
クジャ・・・あんな道に走らなかったら、もっといい道歩いたのかもしれないな。
・・いまさら何言ったって遅いか。
オレは・・クジャが助けてくれたこの命・・無駄にしちゃいけない。
悔いてたってなんもかわりゃしねぇんだ。
「・・生きてやるさ・・・お前の分まで・・・・。」
でもなぁ、その前にこのにっくき蔓、どうにかしなきゃなんないんだよねぇ。
「あーーー・・・ビビに黒魔法でもならっときゃよかったなぁ・・・。」
いっそファイガでも放てりゃ、こいつらもしょせん植物の一部だし、燃やせるのになぁ・・。
オレ・・ガイアに捨てられて・・ボスには接近戦でのしか戦いを教わってないし・・。

・・あーヤメヤメ!

黒魔法できないんだから他の方法にしよう!うん。
それに・・今のこと、クジャを恨んでるみたいに聞こえちまうからな。
トランスは簡単にできないし・・・えーと、何かなかったっけ・・。えーっと・・。


・・・・あ!


「『盗賊の証』ッッッ!!」


ドガンッ!!


不意に思いついて放ってみた。鈍い音が響き渡る。
盗めば盗むほどオレの技の力が上がっていくなんて、便利な技もあったもんだぜ。
おかげでオレのランクもSだし・・。(←ちょっと誇らしげ)
まぁそんなのは置いといて、このぐらい衝撃与えたらちっこい穴ぐらいはあくだろー・・・。
「ってええええええ!!???」
蔓を見てオレは仰天した。どういうことかあれほどの衝撃与えても穴なんてあかねぇ。
っていうか傷さえついてねぇよ。

「どーすんベ・・オイ・・・。」

これはマジでやばいかもなぁ。
しゃーない、だったら一生ここで暮ら・・・・・・せないしなぁ。
マジどーしよーかねぇ?


う〜〜〜〜ん・・・・・。


「・・・ジタン?」




う〜〜〜〜ッ、何か持ってなかったっけ?役に立ちそうなの・・。
まぁこんな時に都合よくあるのなんてどっかの小説ぐらいだよなぁ。(注※ これは小説です。)
やっぱもってないよなぁ。


「ジタン?いるの?」


クジャは何か持ってないかなぁ・・。服着替えりゃ何でもできるのとか・・・。
石を装着すると魔力ない奴でも召喚獣が出るとか・・。
はめ込むと魔法が使えるまーるいいろんな色の玉とか・・・。
使うと魔法の出る石とか・・。


「いるなら返事をしてよ、ジタン。」


やっぱないかぁ。人生都合よくいかねぇよなぁ。
じゃあこれから本当にどうしようか・・。



「ジタン!!!」
「うぅあはいぃぃ!!!何か!?」



いきなり名前を呼ばれた気がして、それまで考え事をしていたためかビビって変な声だしちまったよ。
「・・いるじゃない、ジタン。」
蔓の外から声がする。・・・・・・誰?
「あなたとクジャを探してここに来てみたら・・歌が聴こえてきたから・・・。」
・・本・当に誰?・・女みたいだけど・・さっぱりわかんねぇや。
女の子の事ならよく知ってるつもりだったんだけどな〜〜。

・・・フライヤ?・・いや、フライヤはもっと大人っぽい。
・・・ルビィ?・・違うな、ルビィはこんな言葉づかいじゃない。
・・・エーコ?・・全然違う。エーコはこんなに落ち着いてない。(←失礼)


「あなたもクジャも人に変な心配ばかりさせるんだから・・・。」


じゃあ・・・・・。



「・・ダガー?」



もしやと思って聞いてみた。ダガーがこんな所に来てるはずないだろうけど、でも・・。

「・・・違うわ。」
・・・ありゃ。違ったみたい。そうだよな、やっぱ・・。
・・・ん?じゃあホントに誰?
「・・残念そうね。でも、私のことを妹って言うのなら、
 その妹の名前ぐらい覚えといてほしいものだわ・・。」
・・妹?オレの?オレに兄弟も何もないはずだけど・・・。
・・・・・えーっと・・・・・・。


「・・・・・・・・・・・・ミコト・・・・・・!」
「そうよ。思い出してくれたかしら?」
そっか。ミコトだった。オレのかわいい妹だな。
ありゃりゃ、いろいろあったとは言え、かわいい妹の名前を忘れてちゃー兄として失格だねぇ。
「・・・・どうしてこんなとこに来たんだ?」
って言うか、よく来れたな。
さすがオレの妹、って言いたいけど、まさか1人できたんじゃあないだろうな・・。
「・・助けに来たのよ。あなたとクジャを。」
・・・・・・・・・・・。まぁ・・何とよくしてくれる妹さんじゃあありませんか。
「妹よ!!」
「・・な・・何よいきなり・・・。」
この蔓さえなかったらミコトのことぎゅ〜〜ってしてやりたかったな。
まぁここからでたらやってやるか?どんな反応するか見たいし。
「・・・まぁいいけど・・。ジタンはとにかく無事みたいね。」
「そりゃさ〜・・オレは簡単には死なないって。」
クジャに命助けてもらったからな・・・・・。あれがなきゃオレはクジャと一緒に死んでただろうなぁ。
それにしてもミコト、喋るの上手になったよな〜〜。
前はすっげぇかたーーい言い方しかできなかったのにさぁ。
オレがいない間にきっとビビとかがいろいろやってくれたんだろうな。感謝感謝。
でもオレの事を『お兄ちゃん』とはまだ呼んでくれないのね。ま、これでも大きな進歩か。
「・・クジャはどうしたの?テレパシーにも反応してくれないし・・。
 まぁ、あなたも反応してくれなかったけどね・・。」
そんなもの送ってたのか?全然気づかなかったなぁ。
でもクジャのほうは・・・。
「・・・クジャは・・死んだよ・・・・。」
そういったら、少しビックリしたのかな?ミコトの気配が一瞬ふっと抜けたように感じになった。
「オレをかばってくれたんだ。『君は生きろ』って言って・・な・・・。」
オレはそっとミコトの声の方向からクジャのほうへ顔を向けた。
あいつは確かに許されない事をしたけど、最初から最後まで悪ではなかった。
きっと、想いがオレへ向けられて・・・。それが憎悪に変わっちゃったんだろうな。
オレが変な風に生まれなかったら、こうはならなかったかもしれないけど・・。
「・・・そう。」
ミコトは納得してくれたのか、やるせない気持ちが残っているのかはわからない。
・・・でも今は考えられないや。
またあのときの事思い出しちゃったよ。
ホンッと自分が情けなくて涙が出るぜ・・・・。


「・・クジャはきっと・・・。私たちに希望を与えるために生きた・・。」
いきなりミコトはそんなことを言った。・・何言ってるんだ?
「クジャが生まれて・・あなたが生まれた。だからクジャはあなたを憎んだ。
 でも・・・その憎しみがあったから、あなたは私達の村へ来た。
 あなたがガイアで育ったから・・何も知らない私たちに、ガイアで一緒に生きよう、といってくれた・・。」
ミコトがオレに・・いや、オレ達に、淡々と語る。




































・・・運命とは皮肉なものだわ。

クジャは自分の意思でジタンをガイアに捨てた。
ジタンは自分の意思ではないのにガイアで育った。

その2つの行動が、最終的に私をこのガイアに呼び寄せた。

運命は、神が創るものじゃない。
1人が行動したから、もう1人の運命が決まる。
自分が行動したから、自分の運命が変わる。
運命は、神が創るものじゃない。


自分達で作ったものを・・簡単に『運命』と言う単語にしているのよ。


クジャは自分の意思でジタンをガイアに捨てた。
ジタンは自分の意思ではないのにガイアで育った。



だから今・・ジタンは生きて、私と話している。
私はジタンと話をしている。



「ジタンとクジャ、と言う存在があったから・・私もここにいる。
 ガーランドの存在があったから・・・私たちはここにいる・・・。」


人は誰かが行動しなければ何も手に入れられないのだから。


「・・・・辛気臭い話はもう止めましょうか。」
私・・何か変に気だるくなってきてしまったわ。
いろんなことを頭が駆け巡って、気持ち悪い・・・。
私、疲れているのかしら・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・こんな話は、また・・いつか・・・。」
でも、考えなければいけない気がする。

あなたと一緒に。

私1人じゃ、きっと何もわからないわ・・。
「・・ジタン、この蔓を壊すから・・少しどいてた方がいいわ。」
「ん?ああ・・。ちっと待って。」
一瞬戸惑ったような声をしたジタンは、何かが崩れるような音をさせながら移動している・・。
何してるのかしら?
「・・っとぉ!」
ジタンが突然間抜けな声を出す。・・落ちてるんじゃないでしょうね・・。
「ジタン・・平気なの?」
「へーきへーき!オレの足をなめんなよっ・・と。だてに小さい頃から盗賊やってねぇよ。」
・・確かに心配の必要はないみたいね。軽快な足音が少し聞こえる。
でも気になるわね、変な音が足音と同時に聞こえる気がするんだけど・・。
・・・まぁ・・それはいいわ。
「いーぜ、ミコト。どうせ壊すなら派手にヨロシク〜〜♪」
・・・何呑気な事言ってるのよ・・・。
まぁ、ジタンらしいともとれるけど・・・。
「・・じゃ、いくわよ・・・。」
それまでの雑念を消して、私は詠唱に集中する事にした。
・・・
地の底に眠る星の火よ、古の眠り覚し、裁きの手をかざせ・・・・『ファイガ』!!!



ド・・・ッン!!!



「おぅわ!!?」
ジタンの驚いたような声が聞こえる。
砂煙があたりに散る。・・少しむせる・・・・やりすぎたかしら。


・・・でも効果はいいみたいね。


硬いといってもやはり植物・・簡単に燃えてしまったわ・・・。
「サンキューミコ・・げほっ!!・・でもやりすぎだぜ。」
奥からジタンの声がする。
「あなたが派手にしろって言ったんじゃなかったかしら?」
「確かに言ったけど・・それでも限度ってものがあるだろ〜〜。」
ぶつぶつ文句を言ってる・・。言ってる事が違うじゃない。
ずるいんだから。
「まぁ脱出できたからいいんじゃないの?」
「・・まぁな・・。」
砂煙の中からジタンが出てきた。それを見て私は一瞬石化した。
ジタンはすごく・・痩せていた。いや、前々から細かったけど、必要以上にやせ細ってしまっている・・。
それはそうよね、なんせ1年も眠ったまま・・生きていたのでしょうから。
ジタンはぼろぼろの白い布に何かを包んでいた。
「・・それ、何?」
「クジャの骨。」
私が聞いたら、ジタンはさらりと答えを返した。
証拠とでも言うように布を丁寧にどけて中身を見せる。
少しぞっとするほどの量の骨が規則正しくならべてある。
・・・さっき何かしていたのはこれだったのね。
私はそれで納得した。
「帰ったら、これ綺麗に洗って、ここに墓つくってやろうと思って。」
そしてにこっとジタンは笑った。
・・・懐かしいわ、その笑顔。
本当なら、その笑顔を一番最初に見るのは私ではないのに・・・。
「いいよな、世界一でっかい墓を持つんだぜ、こいつ。」
やわらかな笑顔につられて私も何故か口の端が緩んだ。
・・・何があったかは知らないけれど、きっと、あなたなりのクジャへの感謝の仕方なのね、それは。



私も・・感謝しなくちゃね。















待ってろよ、クジャ。
オレがもうすぐここに墓つくってやるから、安心して眠れよな。
オレだけが幸せになっちゃいけない。
だから・・ここに墓つくるまで、オレ、どこにも行かないからな。





互いの想いをもちながら、ジタンとミコトはイーファの樹の蔓の上を慎重に降り、黒魔導士の村へと向かった。
その時にそっと・・少し冷たいが、とてもやわらかなそよ風が吹いた。












『・・・君は・・・生きるんだ・・・・・。』







クジャのそんな声が、風に混じって聞こえた気がした。














fin.







* * * * * * * * * * * * * * * * * * *あとがき * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
この作品、「9-FF〜」が閉鎖する前に投稿するはずだったんですけど、
管理人の気まぐれのせいで、結局ここのHPでのみ公開する事になってしまった哀れな作品です(オイ)

結局この作品で何がいいたかったかと言うと、
ジェノム3兄弟の話を何でもいいから書きたかったって言うのと、
ジタンがどうやって助かったのかって事を自分なりに書いてみたかったんです。

まずどうしてジタンを助けた(外に出した)のがミコトかと言うと、
多分リンドブルムやアレクサンドリアの人たちが見つけたなら、
かならずシドやガーネットに情報がいくと思うんですね。
でもガーネットはジタンがあの劇をやるまでジタンが生きている事を知らなかった。
他の人はどうかわかりませんが、まぁ知らなかったと言う事にしてみると、
誰にも知られずにすむには、黒魔導士の村の人だろう、という事になりました。(近いし。)
黒魔導士の村=ビビと考える人もいるかと思いますが、
ビビはもう自由には動けないでしょうし・・。じゃあミコトだろうと。
まぁそんな感じでわかってもらえると嬉しいです。

構成の方は全体的にわかりにくくなってしまいましたね・・。

最初はクジャ視点、次がジタン視点、その次がミコト視点、
で最後が第三者からの視点、になったんですが・・。

・・わかりましたか?(汗)
それぞれ変わった部分・・・。

・・・まぁそういう事を除けば、全体的に書くのは楽しかったです。
こんな作品を読んでくれてありがとうございました〜〜。
構成が下手で読みにくかったとは思いますが、ここまで付き合ってくれてどうもありがとうございました。



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